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ヨーロッパが日本の伝統工芸「こけし」に注目


こけしが登場人物の絵本『Kokeshi-Aoki』はスイスの書店にも並ぶ(著者撮影)

こけしが登場人物の絵本『Kokeshi-Aoki』はスイスの書店にも並ぶ(著者撮影)

東北地方の民芸品「こけし」が最近、日本の若い世代の注目を集めているという。かわいいものが好きな日本の若い女性たちが、この木製の人形を部屋に飾ったり、こけしをデザインとして取り入れたこけしストラップやこけしバッグなどを買ったりしているらしい。

そういえば筆者の周囲でも、近頃こけしを見かけることが多くなった。人形ではなく、こけしをモチーフにした品物だ。

いまヨーロッパでは日本のハローキティグッズが爆発的な人気で、ありとあらゆるキティ商品が売り出されているように、こけしを1つのキャラクターとしてとらえて、「かわいい! こけしだから買いたい」という女性や女児を増やすねらいなのかもしれない。顧客ターゲットは男性も考えられる。こけしグッズを恋人、妻、娘へのプレゼントにしてもらうことが十分可能だからだ。

まずは国境を越えて読者層がじわじわと広がっている、こけしが登場人物の絵本を紹介しよう。日本に住むAokiという女の子のこけしのお話『Kokeshi-Aoki』だ。Aokiが新幹線で東京にいる友だちのYokoに会いに行き、観光する内容だ。フランスのイラストレーターAnnelore Parotさんが作ったこの絵本はフランスだけでなく英訳されてイギリスでも発売され、スペイン語版もあり、今春はドイツ語版が出版されてドイツやスイスの書店でも手に入るようになっている。

フランスで発売中のこけしをボトルに見立てた香水「Kokeshi Parfums」、5種類、各約2990円。すでに中東や南アメリカでも販売を始めた © Parfums Kokeshi Licence by M.E.C (The Millennium Essence Company)

フランスで発売中のこけしをボトルに見立てた香水「Kokeshi Parfums」、5種類、各約2990円。すでに中東や南アメリカでも販売を始めた © Parfums Kokeshi Licence by M.E.C (The Millennium Essence Company)

ほかにもキーホルダー、ポーチ、手鏡、ステッカーといった雑貨が、こけしのデザインで徐々に売り出されている。そんな中、今年5月に新発売のこけしをボトルに見立てた香水「Kokeshi Parfumes」5種は、香水を日常的に使う人が多いヨーロッパではそういった雑貨以上に購入者が見込める品だろう。9月末の時点で、すでにフランスの1000以上の店で販売されている。雑誌『コスモポリタン』の2012年9月号でもおすすめアイテムとして取り上げられていて、今後、注目度が高まりそうだ。

「Kokeshi Parfumes」を考案したのは、パリ近郊のThe Millennium Essence Company社だ。同社は、子ども向けの香水の販売で成功していて世界に販売網を持っている。社長のFrédéric Beaulieu氏は、「香水として楽しむのはもちろん、デコレーションとしても使えます」とコメントを寄せてくれた。各種の香りと愛らしいデザインが生まれた理由については、国外販売部長である夫人のPriscilla Beaulieuさんが日本を訪問した際にこけし人形を買ってきて、人形から彼女自身がインスピレーションを得たものだと説明してくれた。

男性が持っていてもおかしくないと感じさせるデザインの商品もある。Pat Says Now社のこけしデザインのラップトップケースだ。黒地に赤と白の花が舞い、こけしがたたずんでいる。同社は日本が好きな人のためにとデザインした。

ヨーロッパ中に、そしてアメリカにも販売の輪を広げるPat Says Now社のこけしデザインのラップトップケース「Kokeshi」。約3080円 © Pat Says Now AG/SA

ヨーロッパ中に、そしてアメリカにも販売の輪を広げるPat Says Now社のこけしデザインのラップトップケース「Kokeshi」。約3080円 © Pat Says Now AG/SA

さらには芸術品としてこけしを描いている人もいる。スイス在住の画家Doris Baumelerさんは、昨年の展覧会でこけしの絵を展示した。Baumelerさんのこけしの絵が掲載された展覧会情報を新聞で見た女性は一目で気に入り、展覧会に急いで行って売約にしたという。

ほかに見に来た人たちの反応については、Baumelerさんはこう語った。「この人形はいったい何だろう、どこの国の人形だろうと多くの人たちがとても関心を示していました。人形自体もとてもかわいらしいし、すごく特別な雰囲気だし、折り紙もきれいだと言っていましたね」

Baumelerさんは、折り紙に魅せられて作品に取り入れたいと思いアイデアを練っていたときに、こけしをインターネットで見た。「こけしは一瞬で私の心をとらえました。作り方が面白いし、なんて様々な形があるのだろうと。手作りで製作しているこけしは本当に美しくて魅力がありますね」

Baumelerさんは、ほかの作品も多数手がけているのでこけしの絵だけには集中できないが、将来また描きたいそうだ。

和食や漫画の人気によって、遠い国である日本を理解したいという人たちがヨーロッパにも増えたが、単にかわいらしいという域を超えて「こけしは美しい」と感じる人が増えていけば、日本への興味もますます高まっていくことだろう。

» 参考記事:「こけし」が女性や若者の間でブームになる理由 日経トレンディネット2012年4月9日
» 津軽こけし館
» Annelore Parotさんのサイト
» Parfums Kokeshi Licence by M.E.C (The Millennium Essence Company)
» Pat Says Now GmbH & Co. KG
» Doris Baumelerさんのサイト

 

こけしを芸術的に描いた画家Doris Baumelerさんの作品「kokeshi」。縦15センチメートル、横15センチメートル。背景は折り紙(カンバスに折り紙を張り付けた)  copyright by Doris Baumeler, www.doris-baumeler.ch

こけしを芸術的に描いた画家Doris Baumelerさんの作品「kokeshi」。縦15センチメートル、横15センチメートル。背景は折り紙(カンバスに折り紙を張り付けた)  copyright by Doris Baumeler, www.doris-baumeler.ch

 


Author: 岩澤 里美 スイス在住。「外国で生きるとは」を切り口に人・コトを取材。JALファーストクラス機内誌『Agora』などへの寄稿が好評。Global Press副理事。